ザッツ・ヘアースタイル
三十路男!12歳年下の娘との恋愛体験談
まずは髪型を修復すべく、美容院へ。
もうこの時点で、私が持っている一番オシャレな服である「秘法・リバージブルジャンパー」の出番です。
まぁ、これにしても、通常の人であれば自殺物の一品であること間違いなしな訳ですが、昨晩家中をひっくり返して「オシャレになるために美容にいくことが出来る最低限のオシャレ」に耐えうるのはありませんでした。
これはオレンジと抹茶色のリバーシブル構造という画期的なシステムを採用しているにもかかわらず、オレンジの面に巨大な紫色ネズミのアップリケが採用されているとんでもない代物でして、まったくその機能面を生かせないという有様。
しかも、紫色の病気みたいなネズミにはこれまた巨大なふきだしが付いていて、その中には
「HARD DAYS! YHA!(しんどい毎日!ヤー!)」
と書いてあるという末期ぶり。
つまりフリーマーケットで\200という理由で購入した後、この毒ネズミを封印したまま抹茶色のジャンパーとしてだけ使用してきた一品です。
そんな街一番の歌舞伎者こと私は、無事に美容院に到着。
「ご予約は?」とか「担当は?」などと、ナチの高官としか思えない残虐な尋問を受けるものの、なんとか切っていただけることになったのでした。
「今日担当する高橋(仮名)です。上着をお預かりします」
と、紳士なイケメン美容師なうえ、上品で上流なこと山の如しな男が、下品な私の下流なジャンパーを預かっていきます。
言われるままに別の店員さんにモゾモゾ上着と荷物を渡した後は、「今日はどんな感じで?」みたいなおきまりのやつの登場です。
「死んで4日経った板前」風の髪型で「どんな」もないもんですが、とりあえず事情を話し、雑誌の適当なモデルの中で可能と思われる物を指差してお願いすることに。
散々緊張していたんですが、いざ切り始めてもらうと私には何もすることが無く、手持ちぶたさ。
単純な沈黙に耐えられずに、携帯で由比ちゃんのメールをチェックすることにすると、あれ?無い?携帯…あ!上着の中だ!
モゾモゾしていたところ、流石は気の利く上流イケメン美容師は私の異変を察知して…
「あ!携帯ですか?(他の店員さんに向かって)ちょっと上着をお取りして」
と、気遣いを見せてくれたんですが、上着がこちらに持ってこられると先ほどまで軽快に動いていたハサミが急に動きを止めてしまったのです。
何事だ?と思い、イケメン美容師の視線を辿ると、そこには私のジャンパー。
そして、「HARD DAYS! YHA!(しんどい毎日!ヤー!)」と叫ぶ毒ネズミのアップリケが丸出し。
私は「あ…」と言ったまま絶句してしまい、ひったくるようにジャンパーを受け取り、携帯をポケットから出したのです。
それから役30分。先ほどよりもより濃厚な沈黙の中、明らかに笑いを堪えているイケメン美容師のハサミはプルプル震えていたものの、見事髪型が修復。
感じとしては「売れてないお笑い芸人」という感じでしょうか。
「死んで4日経った板前」からすると大躍進と言えるでしょう。
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